perfumeが切り拓く地平(下書き)

ポリリズムとは「複数のリズムが平行して(同時)進行すること」を差すのですが、この曲ではボーカルのフレーズがループする部分(「ポリループ・パート」というらしい)が実際にポリリズムになっていて、聴く者の耳を捉えます。

パッと聴きでいうと、キックが4/4、ボーカルが5/8、シンセが3/16、ですかね?キック基準で見ると、1小節でボーカルが1拍ずつ、シンセが1/2拍ずつ、フレーズの頭が後ろにスリップして行く感じでしょうか。あんまり自信がありません。まあ、細かいリズム解析がここでの目的ではありません。「ボーカルのループ部分がポリリズムになっている」というリズム構成がこの曲のフックとして機能していることを了解してもらえれば良いです。
さて、今度は歌詞の方に目を向けましょう。

とても大事な キミの想いは
無駄にならない 世界は回る
ほんの少しの 僕の気持ちも
巡りめぐるよ

「キミの想い」が「世界を回」し、「僕の気持ち」が「巡りめぐる」―この部分だけを取ると、所謂「セカイ系」の様に受け取ることも可能です。が、そう単純に断じてしまって良いのでしょうか?僕には、そうすんなりと受け取ることが出来ません。「とても大事」な「キミの想い」と「ほんの少し」の「僕の気持ち」という非対称性が、「キミと僕=世界」という構図が成立するのを遮っている様に思えるからです。ここは一旦保留して、次を見てみましょう。

くり返す このポリリズム
あの症状は まるで恋だね
くり返す いつかみたいな
あの光景が 蘇えるの?
くり返す このポリリズム
あの反応が 嘘みたいだね
くり返す このポリループ
ああプラスチック みたいな恋が

今度は「ポリリズムがくり返す(ループする)」ことが強調されています。これはポリループ・パートのリズム構成が示すもの(ループ→ポリリズム)とは逆のベクトル(ポリリズム→ループ)を示しています。つまり、この曲はリズム構成と歌詞という二つの方向から「ポリリズム←→ループ」という図式を提示しているのです。さて、これは何を意味するのでしょうか?
ポリリズム」とは「差異」のメタファに他なりません。そして、「ループ」とはそのまま「反復」です。差異と反復――ドゥルーズですね。ドゥルーズを念頭に置いて、この曲が提示する「ポリリズム(差異)←→ループ(反復)」という図式を考える時、そこに何が見えるでしょうか?差異は反復を生み、反復によって新たな差異が見出され、そしてまた反復が生まれる・・・この図式が(つまり、この曲が)意味するのは、あの「永遠回帰」なのです。そしてここで、上で保留とした「キミ」と「僕」の非対称性の問題も解決します。この非対称性(=差異性)が反復(巡りめぐる)を生み、世界は回る(永遠回帰)ということになるわけです。
推しメンはのっちです。
(続く)